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〜第8頁〜
(ショートショートストーリー 作:森 綾香)
「いや、すまん。つい目を離した隙に逃げられた。」
申し訳なさそうに松浦が言う。
「いや、いいよ。君にまで迷惑を掛けて済まない。」
松浦の頭に載せている氷を取り替えながら孝が言った。翌朝、松浦はまんまと二日酔いと成ってしまったのである。
「だけど、奴は凄いな。とんでもない酒豪だ。俺、かなり自信あったんだけど。そこだけは感心するぜ。」
ズキズキと痛む頭を氷で押さえながら松浦が言う。
「ところで例のアレ。」
「ああ、アレね。まかせとけ!まんまと逃げられたが、バッチリ手は打ってある。」
ニカっと笑って見せる松浦。
*****
「クソッ!何だ、これは。解いても解いても、ロックが出てくる。」
一方、斉藤はイライラした口調でキーを叩き続ける。そして、キーを叩きながら、脇に置いたグラスの水で、二日酔いの薬を飲んだ。頭には氷嚢が載せられている。
「パスワード!パスワード!パスワードっ!!クソッ!」
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「二日酔いの頭にゃ、こたえるぜェ。パスワードが複雑な上。何重にも張り巡らしてるからなぁ。」
松浦は得意げに笑った。
「一体どれだけシールドを貼ったんだ?」
「さぁてね?かなり張り切って貼ったからなぁ。まぁ、ありゃ、よほど根気のある奴じゃないとマズ解けないだろ。明日辺り、奴の家にでも行ってみるか。ありゃ、一日二日じゃ解けるシロモンじゃあ無いからな。きっと、徹夜で目の下真っ黒にしてるぜ。」
「趣味が悪いな。」
悪ノリする松浦に孝は苦笑いしたが、松浦は気にせずカラカラと声を立てて笑った。
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目の下に隈を作りつつ、それでも斉藤は諦めていなかった。パソコンに向かい、不気味に笑う。何か思惑でもあるのか、それともあまりの困難さに壊れたか。前者、斉藤は抜け目が無かった。
「馬鹿の一つ覚えみたいに、ロックを張り巡らしゃいいってもんじゃないぜ。」
そう言うと、一つのソフトを起動させた。
「藤木君、パソコンにまだまだうとい君は知らないかもしれないが、パスワードを解くための専用ソフトというものが、この世には存在するのだよ。ふふふ。」
パスワードを解くための専用ソフトとは、一秒間に何十何百という文字を順番に片っ端からパスワードに当てはめていき、人間の手ではとても解読できないようなスピードでパスワードを解読することが出来るソフトの事である。次々と解読されて行く、パスワードを眺めつつ斉藤は不敵に笑う。
「俺の勝ちだな。」