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〜第6頁〜
(ショートショートストーリー 作:森 綾香)
「許せん、許せん!許せぇぇぇぇーん!」
松浦は口から火でも吹かん勢いで叫んだ。喫茶店のお客達がビックリした顔でこちらを見る。そんな人目を気にしつつ、孝はどうどうと松浦をなだめる。
「まぁまぁ、落ち着いて。」
「これが、落ち着いてられっか!大体お前もお前だ!俺があれほど奴を部屋に入れるなって言ったのに、また、性懲りもなく入れるか?!」
松浦はそこまで一気に言い終えると、孝がシュンと成っているのに気が付いた。
「すまん、つい、カッと成って・・・。」
「いいよ、ホントの事だから。僕も斉藤君を部屋にあげまいとするんだけど。どうしても駄目なんだ。もう、僕はどうしていいんだか。このままじゃノイローゼにでも成りそうだよ!」
悲痛な叫びをあげながら頭を抱え込む孝を、松浦が背中から励ます。
「お前は悪くない。憎むべき敵は、あの斉藤だ!!」
「でも、・・・確かにデザインは盗むけど、それ以外はイイ奴なんだ・・・。敵だなんて・・・」
斉藤を敵だとキッパリ言い切った松浦に、しどもどろに孝が言った。
「お前は、まだそんな甘っちょろい事を言ってるのか!あいつは敵だ!敵にまで優しくする必要はない!」
松浦は脇に置かれたアイスコーヒーをストローを無視してガブリと飲んだ。そうして、口の中の氷を音を立ててかみ砕きながら呟く。
「それにしても、奴をどうやってとっちめるかだ。このままじゃあ、こっちの気がおさまるらねぇ。ああいう奴だ、直接注意してもシラを切り通すだろう。こっちも完全に尻尾はつかめてないし。なんか、いい手は・・・。そうだ、エサを撒いといて、奴が盗む現場を押さえて、その場でボコボコにするか!」
松浦は嬉しそうに言った。
「それじゃあ、まるで警察の使う手だよ。ワザと盗ませるなんて、僕は気が向かないな・・・。それに、暴力だなんて・・・それこそ、僕らの方が悪者に成っちゃうよ。」
「ノリだよ、ノリ。」
松浦は深刻げに言う孝の背中を笑いながら叩いた。孝は苦笑する。だが、その一方で親身に相談に乗ってくれる松浦の存在がありがたかった。
「ま、お前のことだ、そう来ると思ったよ。一番手っ取り早いんだが。暴力も駄目、網も駄目。さぁて、どうすっかなぁ?」
ストローの端をかじりながら、松浦は天井を見上げる。孝もグラスの水面を睨みながら、熟考し始める。
そうして、二人の沈黙の中、しばらく時間が流れた。
「お、そうだ!」
松浦が突然沈黙を破る。
「ちょい、耳かせよ。」
松浦の言葉に孝も身を乗り出した。
松浦が耳打ちし始めると、孝の目は見る見る間に大きく見開かれた。
「だけど、それは・・・。」
「ま、俺に任せとけって。お前は次のコンペのデザインに専念しとけ。」
そう言って孝の肩を叩くと、松浦はイタズラっぽくウインクして見せた。