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「男の見た夢」〜第4章〜

(ショートショートストーリー 作:森 綾香)

次の日の夕方。翔太のバイトの時間である。酒を飲んだ後の記憶はないので、どうやって家まで帰ってきたのかまでは定かではない。

しかし、不思議とちゃんと服まで着替えて、ちゃっかり布団にまで、もぐりこんでいた。人の習慣とはなかなかのもんである。唯一、ひどい二日酔いだけを除けば、いつもとなんら変わらぬバイト日和である。

「あっ・・たま、いてぇぇ・・・・ううう、昨日、飲みすぎた・・・・・・・」

翔太が布団の中で、激しい頭痛にもだえながら、目覚まし時計を見ると、既に、バイトの開始時間を10分も過ぎている。今から急いで行っても、30分は確実に遅刻をすることになるだろう。店長の切れまくった顔が目に浮かぶ。あのキンキンと耳をつんざく声。

「二日酔いの頭にあの声は、かなり厳しいな・・・」
思わずしぶい顔で布団をかぶる翔太。
「あー・・・・もう、今日はサボろ!無理!無理!でも、電話どうしよっかなぁ・・・・店長うざいし・・・・・・」

枕に顔を突っ伏したまま、携帯があるであろう箇所をまさぐる翔太。

「んー・・・多分、休ましてくんねーだろうし・・・事後報告ということで!おやすみなさい!!」

手に触れた携帯を放り出し、再び、布団をかぶりうとうとし始る翔太。昼寝というのは不思議なもので、いくら寝ても寝たりないし。惰性で眠ればばねむるほど、それが誘引となって、更なる眠気を誘発し、いくらでも眠れてしまうというものだ。ましてや、楽しい夢が見れるならば、なおさらである。

翔太は目覚めて腹がすけば、戸棚のカップめんをすすり。のどが渇けば、蛇口の水を飲み。トイレに行きたくなれば、とっとと行き。後は何をするでもなく、ただひたすら眠りこけていた。

そんなことが2,3日も続いただろうか。布団の中でぬくぬくしながら、翔太はフトつぶやく。

「あー・・・なんか、やっぱ、夢っていいなー。現実の俺って、ホント、なーんにもないもんなー・・・・。しがないフリーターだし、金も持ってないし、毎日つまんねーし・・・・バイト、だいぶサボったし、なんか、行きづらいし、止めちゃおっかなー。」

そうボヤきながら、寝ぼけまなこで、冷蔵庫を開ける翔太。
「俺にも休養が必要だよな。なんか、パワーないもん、最近。毎日毎日バイトで疲れちゃうんだよなー・・・・夜勤多いし・・・」

いい気なもんである。翔太は、冷蔵庫の中にあった、底にちょっとだけ残っていたコーラーのペットボトルを飲み干すと。ゴミ箱に乱雑に投げ込む。そうして、軽く肩を回して、気合を入れる。

「よし!寝よ!」
そう叫ぶと、翔太はさらに威勢良く言葉を続ける。
「寝て、寝て、寝て、寝て、おきて!それで、元気になったら心機一転、新しい職を探す。夜勤じゃない、で、自給のいい。ラクな。・・・・あるかな?」

しばし、思考がとまる翔太。しかし、頭をぶんぶん振って気を取り直す。
「いや、探すさ!よし!パワーが出るまで、しばらく、俺はぷーです!おやすみなさい!!!」

情けなくも、現実逃避すべく、またも布団にもぐりこむ翔太。しかし、彼は彼なりに、変わろうとしているのだから、そんなつれないこと言わないでやってくださいな。

「せっかくだから、いい夢見れるといいな。夢の中で俺は超リッチで、やり手で、女にもモテて・・・・」

翔太はすやすやと寝息を立て始める。その寝顔は安らかだ、予定通り素敵な夢を見れているようである。
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2003/09/08-2003/09/10 作成 by綾香