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〜第6章〜
(ショートショートストーリー 作:森 綾香)
しかして、こちらは当の現実世界。
《ドンドンドン!ドンドンドン!》
翔太の部屋のドアをたたく山根。
「おい!店長がカンカンに怒ってるぞ!早くバイトに出て来い!何日サボってるんだよ!まさか変死してるってわけじゃねーだろ!開けろよ!おい!携帯にも出ないしよ!」
すると、ドアに鍵がかかっていなかった。
「あれ?」
拍子抜けしながら、山根は翔太の部屋に入ってゆく。ゴミだめのように散らかった部屋が目の前に広がっている。流しにはコンビニ弁当やカップめんの殻が山ほど転がっている。
「うぇっ!きったねーなぁ!」
山根は思わず叫んでしまう。
そんな翔太の部屋に似つかわしくない、高価な敷布と羽毛布団が部屋にしきっぱなしになっている。部屋はもぬけの殻だ。
「あれ?あいつ家にいないのか?いったいどこ行っちゃったんだよ!」
きょろきょろと辺りを見回す山根。
******
数日後、再び、カウンセリングルームを訪れた翔太の夢の中の男は、嬉しそうにカウンセラーに向き直る。
「先生の教えてくださった方法のお陰で、僕はようやく夢らしい夢を見られるようになりました。夢の中で惰眠をむさぼるなんてバカげたことはありません。お陰さまで、不眠症になるのはすっかり防げそうです。」
そうにっこりと笑う男。
そう、男の夢の中で惰眠をむさぼる翔太は消えた。かくして、布団の中で夢を見続けることで、男のロマンをかなえたあの眠り男はこの世から消え去ったのだ。
かつて夢を追い、夢を見続けとうとう一大ロマンをかなえた眠り男は、結局その喜びをかみ締めることはかなわなかった。跡に残るのは、敷布団に残った翔太の汗じみだけである。