吉本ばななの代表作ともいえる「
キッチン」。かなり有名な作品であり、実際読むことはなかったものの、噂にはかねがね聞いていたので、こちらのほうで勝手に内容を連想していました。
私の中での「
キッチン」は、料理好きな主婦のうららかな日常を描写したものだとか、そんな感じ。それがイザ手にしてみると、もっとずっとコミカルで斬新な設定であったことに、まず衝撃を受けました。
二人暮しの祖母を失った主人公のみかげ(♀)。彼女はキッチンをこよなく愛し、祖母を失った傷心の日より、より眠りにつける場所をもとめ、さぐり、やがてはキッチンで眠りにつくようになっていた。(そうかそれで「
キッチン」か。)そんなみかげを心配して、突如現れるヒーロー田辺(♂)。生前の祖母と親しくしていたという彼が、行き場を失った彼女を自宅にひきとるという展開から物語の始まりです。
恋人でもない男女が一つ屋根の下、ね、どこか楽しげな気配する設定ですよ。それにプラスして、さらに物語りを盛り上げるのが、田辺の母親の存在。はっとするような美しさの母、しかし、その母は元は母でなく、父だったという設定。つまりは、ニューハーフさんなんです。えええええ?そんなのってアリ?
どうでしょう?よもや小説でこのような設定に出くわすとは、思ってもみませんでした。(有名な小説だから、純文学とは限らない、この妙・・)かくして、たった数ページで、「
キッチン=料理好きな主婦のうららかな日常」という私の憶測は、見事に崩されてしまったわけです。その設定、展開のコミカルさはどこかコミックをにおわせます。それゆえに、漫画世代であっても、さくさくと読めるのがうれしい作品でしょうね。
また、内容はもとより、目を見張るのは、この吉本ばななの文才でしょう。物語の全てにおいて、その文章表現が実にスバらしいのですが、それに加え、時折はっとし、そのあまりの流麗さ、ツボを押さえた独自の描写に、つい幾度となく読み直してしまうような、そんな魅力ある文章がところ狭しとちりばめられているのです。
作家となる第一歩の受賞作ということで、ほとんど処女作といえるから、その才能ぶりは、まさに圧巻という感じでしょうね?
※その他、吉本ばななの作品一覧
2006/09/10 by綾香